今回から「コンパクトと黒真珠の風景」を題材に、
どのように鉛筆画を描いているのかをご紹介していきたいと思います。
1)構想を練る |
2)下書きを完成させる |
3)全体に色をまわす−1 |
4)全体に色をまわす−2 |
5)インクを加えて色調を整える |
6)テーマとシーンに沿って完成させる |
鉛筆画を描く
1)構想を練る
テーマを決めて、構想を練りながら、構成するモチーフを決めていきます。 |
私の表現手法は、
モチーフと直接向き合いながら描いていく写実手法ですので、
どのようなモチーフを組み合わせるのかは、
大切な作業となります。
ですが、その前に、
どのようなモチーフを配置するのかを、
具体的にイメージできるテーマ決めが必須となります。
写実絵画の役割の一つは、
そこにあるモチーフの中に、
直接見ることのできないテーマを、
モチーフを通して、
画面に描き出していくことではないかと感じています。
今回は、この絵との出会いで、
モチーフ自体が持つ「美のカケラ」だけではなく、
いっとき自分と対話する”ゆとり”のような感情や、
ポッと心が軽くなる”かるみ”のような感情が、
生まれればと思って描きました。
見た人の”新たな「美のカケラ」の一つ”に加わればと思っています。
そこに至るために、技術やセンスにとって何が必要なのか、
あるべきリアリズムとは何なのか、
毎日迷いながらも、
楽しくチャレンジしています。
ブレることのないテーマを決めることは、
「なぜ自分は描くのか」に通じることなので、
一生向き合い続けるものかもしれませんね。
あらかじめ決めたテーマを、
画面の中に写実化するために、
まずは具体的なストーリーのようなものを構想して、
その中のワンシーンを切り取るイメージで、
モチーフを組むようにしています。
今回は、
日々の暮らしの中の
非日常のワンシーンとして、
少し華やかな場所へ向かう”ワクワク”する気持ちを、
モチーフに込めて見ました。
「シーンを決める」は、後日別のブログで 詳しくお話ししたいと思います。
少し華やかな場所へ向かうイメージとして、
装いの道具である、
コンパクト、黒真珠のネックレスに、
華やかな赤い刺繍のあるストールとかすみ草を添え、
アンティークのサイドボードに配置してみました。
光の演出のために、
ほぼ真上からの点光である
大理石足のテーブルスタンドを用意しました。
また、全体を浮かび上がらせるために、
やや左からの室内灯も組み合わせることにしました。
ところで、
これらのモチーフを日頃から揃えておくと便利です。
高価なものである必要はありません。
私の場合は、
街のリサイクルショップ、和洋のアンティークショップ、輸入雑貨を扱う専門店など、
暇があれば、ぐるぐる回っています!
最近は、ネットでも購入可能ですので、
より楽しみが増えているこの頃です。
また、モチーフ探しだけでなく、
優れた「美のカケラ」と出会うためにも、
博物館や美術館へ出かけることもおすすめします。
モチーフを構成する際に、
特に気をつけていることは、
テーマに沿って、モチーフが持つ「美のカケラ」を最大限に引き出すこと。
シーンをイメージさせる配置であること。
モチーフ同士が何らかの関係で響きあうこと。
かたちと色にリアリズムのあるリズムを与えること。
そして、
写実としての意味が存在していること。
モチーフを配置するサイドボードは、
机の上の空間と、背後にある小さな棚の2層となっています。
プレーンなL型空間と違って、少し空間が複雑になります。
単純になりがちなテーブルスタンドからの点光に変化が与えられ、
モチーフ自体が持つ空間が面白くなっていると思います。
光のあり方は、
シーンの第一印象を決定づける要因ともなるので、
モチーフを風のように流れる光には気をつかいます。
このように、とりあえず、仮組みが終わりました。
いかがでしょうか。
この後は、
クロッキーやデッザンを経て、
下書きに至る過程で、
「美のカケラ」を見つけながら変更を加えていきます。
次回は、
「2)下書きを完成させる」です。
では、またお会いしましょう。
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