前回に続き、下記の工程で
「コンパクトと黒真珠の風景」を題材に、
どのように鉛筆画を描いているのかをご紹介しています。
1)構想を練る |
2)下書きを完成させる |
3)全体に色をまわす−1 |
4)全体に色をまわす−2 |
5)インクを加えて色調を整える |
6)テーマとシーンに沿って完成させる |
鉛筆画を描く
2)インクを加えて色調を整える
カラーインクを1色プラス!鉛筆の黒が広がる世界に、赤色が鮮やかに浮かび上がります。 |
私の鉛筆画の特徴ともなっているインク。
鉛筆だけの世界に、たった1色のインクが入ることで、世界は一変します。
鉛筆の黒だけで表現された画面だからこそ、
透明度の高いインクが対比され、
とても鮮やかで美しい世界を醸し出していきます。
中でも「青」は、私にとって特別な色です。
(ラピスラズリー色が好きなので、石が入っているこちらの”碧”の方がしっくりきますが。)
人間が一生の間に最も多く目にする色はどの色でしょうか。
(暗闇の色を除いてですが)
実は青なんではないでしょうか!
地球の7割を占める海の青。
そして、いつも頭上に広がる空の青。
青は、もっとも身近にある自然な色の一つですが、
そこから受けるイメージは、
色を見ているというよりも、
空間そのものを感じているような気がします。
私は、この空間色としての青のイメージを
鉛筆画の表現に取り入れようと、
日々奮闘しています。
今回はインクの世界を広げるために、
あえて赤インクでチャレンジしてみました。
まずは、インクを選びましょう。
インクと言っても、
顔料や染料、油性や水性、液体・ジェル・個体等、
一般使用から工業使用まで様々です。
そんなインクの中で、私は万年筆用の水性インクを使っています。
水性インクは、画材の中でも飛び抜けて高い透明度があります。
透明の水彩絵の具と比べてみると一目瞭然、
水に溶かすと濁りが発生し、
インクのように綺麗な透明色にはなりません。
透明性の高いインクは、
塗り重ねることによって、
ずっと濃くなっていきます。
もちろん限界はありますが、
万年筆で書いた線よりはずっと濃くなります。
描画で使用するインクの種類(青や赤など)については、
色の濃さの限界がどのくらいなのかを、
鉛筆の濃度と比べるテストをしています。
インクの種類は、「パイロット社の色彩雫(iroshizuku)シリーズ」を愛用しています。
この製品は、重ね塗りによる濁りや乾燥ムラがとても少なく、
その上、
日本の風土を感じさせる色調なので、
イメージも湧きやすく、とても重宝しています。
また、重ね塗りをしていくと、
途中で何種類もの色が感じ取れます。
特に「天色(amairo)」は、感じられる色の数が豊富なような気がします。
例えば「天色」を薄い色から濃い色まで塗り重ねていくと、
下記のような色の変化を感じます。
透明シート色
↓霧の中から見た空色
↓水色
↓地平線に近い空色
↓セルリアンブルー
↓真夏の真上の晴天の色
↓コバルト系の青
↓海を覗き込んだ時の色 など。
このように重ねることで次々と変化する色相が楽しめます。
これはワクワクしますね!!!
<パイロット社HPより抜粋>
日本には、美しい自然や景色が多く存在し、またそれ等にはとても美しい名があります。 iroshizuku-色彩雫(いろしずく)シリーズは、その美しい情景から創造された彩り豊かなインキです。 さらなる書く喜びと楽しみをあなたに。 |
https://pgary.hatenablog.com/entry/20090601/p1
インクを塗る時には、水筆を使っています。
以前は細面相などの和筆を使っていました。
しかし、
インクの揮発や筆のコンディションによって、
事前に調整したインクの濃さが変化してしまうので、
今は「ぺんてる みず筆 小」を使っています。
水を入れる空の軸部に、濃さを調整したインクを入れれば準備完了。
とても使いやすい道具です。
私の場合は、
色の濃さを4段階作って、
描く場所や濃さに合わせて
使い分けて描いています。
戻りましょう!
ここまでの段階で、インクを塗る場所を白抜きにして残してきました。
インクの濁りを避けるため、軽く消しゴムをかけて、紙の白色に戻しておきます。
消しゴムは極力使わないようにしています。
使用する場合は、
使う面積をなるべく少なく設定した上で、
まず、
消しゴムの面をカッターで新しくカットします。
周りへの影響を最小限にするために、
適切な形状の消しゴムを選んで使用していきます。
インクは、滲みやムラが出やすいので、
なるべく薄い色を塗り重ねるようにしてきます。
どうしても、描いた縁の部分に色が溜まり易いので、
色をつけない筆や綿棒などを使って処理すると、
綺麗な色面が得られます。
ただし、濃くて細い線状の場合には、
最初から濃い色で、
塗り間違えのないように慎重に描きます。
直線の場合には、
筆を支えるガイドとして定規も使用します。
鉛筆とインクとの境界線は、特に慎重に描きこみます。
鉛筆側にほんの少し(本当に僅か!)重ねるように描くと、
境界線の部分が馴染んできます。
ただし、
何回も塗ると汚れた感じになり、
逆効果ですので気をつけて描き進みます。
こんな感じになりました。
いかがでしょうか。
次回は、
「6)テーマとシーンに沿って完成させる」
では、またお会いしましょう。
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